死者が蘇る伝説の御香 反魂香
反魂香とは、焚くことによりその煙の中から死者の姿が現れるという伝説上の御香です。
世界各地で数多くの伝承が伝えられていますが、国によりその伝承が異なり、日本では落語に登場します。
落語の反魂香
落語(反魂香)の演目では、主人公の八五郎が、隣の坊主が毎晩鉦を叩くのでうるさくて眠れないので、坊主に文句を言いに行ったことから、坊主の身の上話を聞くところから始まります。
坊主の話によると、昔坊主は重三郎という名前の武士で、吉原の高尾という美女と愛し合う関係を持っていた。
ところが高尾が殿様から身請けされる話が来た時、重三郎に操を立てていたのが分かり腹を立てた殿様により殺されてしまう。
重三郎は生前に高尾と、もしどちらかが亡くなることがあれば魂が返る反魂香を焚くことを約束していたので、反魂香を焚いた。すると煙の中から高尾の姿が現れたので、毎晩焚くことにより回向したそうだ。
この話を聞いて八五郎は、三年前に死んだ女房に会いたいから反魂香を分けてくれと坊主に頼みこむが、これは自分と高尾の間にしか効果がないからと言って断られる。
八五郎は、何とかして反魂香を手に入れたいと思い、薬屋へ買いに行った。 しかし御香の名前を忘れてしまい、間違えて反魂丹という腹痛の薬を買ってきてしまい
自宅へ帰り、火にくべるが、煙だけで一向に女房は出てこず、部屋中が煙だらけになると表から戸を叩く音がするので、亡くなった女房が現れたのだと思い喜んで戸を開けると、お隣の婆さんが煙が凄いので文句を言いに来ていたという話です。
中国の反魂香
また、中国では、武帝が李夫人を亡くした時に仙人霊薬を調合させ、金の香炉で焚いたところ煙の中から夫人が現れたという話もあります。
長安では疫病が大流行した時に香を焚いたところ、病人が直ちに起き上がり、病死して3日以内の者は生き返ったという言い伝えもあったそうです。
このように反魂香の伝承は世界各地で様々な物語が残されています。
私は以前、ハワイの僧侶と会話をしている時に反魂香の話をしたところ、ハワイでも似たような伝承を聞いたことがあると言っていました。
死者が再び現れるということは恐ろしいことのように思えるが、亡くなった愛しき方に、一刻再開することが出来るという切なくロマンチックな御香です。